インプレッション

ホンダ「ステップワゴン Modulo X」

Modulo X第3弾は初の登録車

 第1弾が「N-BOX」、第2弾が「N-ONE」だったホンダアクセスのコンプリートブランド「Modulo X(モデューロ エックス)」の第3弾として登場したのは、初の登録車である「ステップワゴン」だ。

 2016年の東京オートサロンで初披露されたコンセプトカーを目にした人も大勢いることだろう。そこで存在を知り、発売を待っていた人も少なくないようで、初期受注は好調という。ルーフがブラックにならなかったことなど、生産の事情等で実現しなかった点もなくはないものの、基本的には展示されたコンセプトカーとほぼ変わっていない。

 また、1980年代前半に人気を博した漫画「よろしくメカドック」とのコラボレーションという意表を突いたPR展開も興味深い。これには今回のステップワゴン Modulo Xを、まさしくこの世代にアピールしたいとの思いが込められている。

 ステップワゴン Modulo Xの開発では「ドライバーの意思にリニアに応える操縦性」「所有する喜びを満たす機能美デザイン」「見て、触って、乗って感じられる質感の高さ」の3点を追求したという。各部に配されたエアロパーツや押し出し感のあるマスクを得て、見た目にも存在感が増しているのは言うまでもなし。その1つひとつが空力性能の向上に寄与している。一方、ブラックを基調にシルバーのアクセントを随所にあしらったインテリアも、精悍かつクオリティの高さを感じさせる。

 運転支援システムの「Honda SENSING(ホンダ センシング)」については、車高15mmダウンに合わせて再セッティングしているので、むろん問題なくすべて機能する。

10月21日に発売されたホンダアクセスのコンプリートモデル「ステップワゴン Modulo X」。専用のフロントエアロバンパーやリアロアディフューザーによって空力性能を高めるとともに、専用サスペンションによって操縦性も高めたモデルになっている。ボディサイズは4760×1695×1825mm(全長×全幅×全高)で、2WD(FF)の「SPADA Honda SENSING」と比べて25mm長く、15mm低い。価格は366万5000円
フロントまわりでは専用のエアロバンパーを装着するとともに、大開口グリルを採用。これに加え、小型化した専用のエンジンアンダーカバーを装備することで走行風をエンジンルームに取り込んでから下面に流すとともに、車体下部のフィンで整流。これによりベース車では味わえない高い直進安定性を実現したという。ヘッドライトはLEDで、専用のLEDフォグランプも標準装備する。衝突軽減ブレーキ(CMBS)、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線維持支援システム(LKAS)、路外逸脱抑制機能、誤発進抑制機能、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能をセットにした運転支援システム「ホンダ センシング」は標準装備となる
足まわりはステップワゴン Modulo X専用デザインの17インチアルミホイールとブリヂストン「TURANZA」(205/55 R17)の組み合わせ。サスペンションも専用品で、路面の凹凸などを乗り越えた際の揺れが気持ちよく収まるセッティングを目指したという
リアまわりでは専用ディフューザーが備わるほか、専用エンブレムでベース車との差別化を図っている
ステップワゴン Modulo Xのインテリア。乗車定員は7名が基本になるが、オプションの「2列目6:4分割ベンチシート」を選択することで8名乗車仕様にもできる。インテリアカラーはブラック×シルバー。9インチプレミアムインターナビのオープニング画面に「Modulo X」の文字が表示されるのも、オーナー心をくすぐるアイテムの1つ
専用のブラックコンビシート(プライムスムース×ソフトウィーブ)
ブラックコンビシートはModulo Xのロゴ入り
フロアカーペットマットもModulo X専用品(アルミ製エンブレム付)
ピアノブラックの加飾が与えられる本革巻きステアリングホイール。ディンプルレザーとスムースレザーを組み合わせた専用品になる
ディンプルレザーの本革巻きセレクトレバーも専用のもの
「2列目6:4分割ベンチシート」に座ったところ

空気の力を感じるオン・ザ・レール感覚

 今回推奨されたルートは、幸いにもベース車が発売されたときの試乗会でも走ったルートだったので、よりModulo Xの優位性を体感しやすかったように思う。

 御殿場IC(インターチェンジ)から東名高速~新東名高速を走ってまず感じたのは、いかに空気の力が大きいか、である。ベース車も背高ミニバンとしては安定感が高く好印象だったところ、Modulo Xはそのあたりがさらに高まっている。4輪の接地感が高く、姿勢がフラットに落ち着いているので、高速で巡行していてずっと安心感がある。

「車体下中央に速い空気の流れを作った」と事前に説明にあったとおりで、まさしくオン・ザ・レール感覚の、ビシッと通った直進安定性があることも体感できる。フロア下の左右輪の間に、まるで空気のモノレールを挟んで走っているかのような感覚があり、さらには走っていてクルマの横方向のブレがあまりなく、微小な操舵に対してもイメージしたとおりスムーズにクルマが曲がっていく。上り坂と下り坂で、その優れた接地感が変わらないところもよい。背高ミニバンであればなおのこと、それらは安心感の大きさにつながり、ひいては長時間走り続けたときの疲労も小さくてすむことと思う。

ステップワゴン Modulo Xのパワートレーンは、ベース車と同じく直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ターボエンジンにCVT(パドルシフト付き)の組み合わせ。最高出力110kW(150PS)/5500rpm、最大トルク203Nm(20.7kgm)/1600-5000rpmを発生

 聞いたところでは、ステップワゴン Modulo Xの開発では操縦安定性を作り込むにあたり、実際に走らせてどうかという“現場”が重要との認識から、解析や風洞試験で基本特性を作った上で、テストコースにモデラーが同行し、1週間にわたって走りながら何度も微調整を行ない、納得のいくものができるまでテスト走行を繰り返すという、通常はやらないことも実施したそうだ。狙った性能を実現するために手間をかけて取り組んだ成果が、ステップワゴン Modulo Xの走りに如実に表れているように思う。

ミニバンの常識を超えた走り

 そして箱根のワインディングでは、少し前まで降っていた雨のせいで路面が濡れていたにもかかわらず、さらに感心させられることとなった。重心が高いミニバンながらもロールが適度に抑えられ、あまり上屋がぐらつくこともなく、いたって走りやすい。操舵に対して自然な感覚でヨーが発生し、ロールするものの過度にせず、内輪のグリップも損なわれることはない。ロールを抑えるのが目的というよりも、運転操作に対してクルマがリニアに反応し、4輪すべての接地性を高めることを念頭にチューニングした結果、おのずとこうなったという印象だ。荒れた路面でもタイヤが離れることなくしっかりと路面を捉えている感覚があるので、運転していてずっと安心感がある。

 そういえば走る前に、ホンダアクセス関係者との会話の中で、開発中に北海道のテストコースの、欧州のワインディングを模したコースで、道を譲って先に行かせたインテグラ タイプRに追いついたという話を聞いた。このクルマがいかによくできているのかを少しオーバーに表現したのかなと最初は思ったのだが、実際に走ってみて、その話があながち冗談ではないことが理解できた。

 足まわりは引き締まった味付けながら、乗り心地は犠牲にされていない。後席に乗ってもよい印象はそのまま。段差を乗り越えたときには瞬間的な入力の強さを感じる面もあるが、振動の振幅は小さく、瞬時に収束するので、フラット感は高く保たれる。これなら乗り物酔いしやすい人も酔いにくくなるはず。後席乗員にとってもメリットのある味付けといえそうだ。

 ベースのステップワゴンは、超低床フロアやクラス最大を誇る室内空間の広さに加えて、1.5リッター直噴ターボエンジンや独創的な「わくわくゲート」など、ライバルにはない武器を持っているのも魅力。そんなミニバンとしての実力の高さに加えて、背高ミニバンでもここまでできることを知らしめた、まさしくミニバンの常識を超える走りを身に着けたのがステップワゴン Modulo X である。その素晴らしい仕上がりを味わうと、366万5000円という価格がとても買い得感があるように思えてくる。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛